GS-200RCの光軸調整

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BKP200の光軸調整

GS-200RCの光軸調整 (2023/02/15 更新)

 

長焦点天体望遠鏡を純カセグランのGS-150CCからリッチークレティアンのGS-200RCにアップデートしました。BKP200同様に購入のままではピントが甘く小さな星が写らずPlateSolvingに失敗するケースがみられました。今回光軸調整を本格的にするにあたり、GS-200 にはスケアリング微調整の構造がないと言うことで、この為に”M90RC接眼部用光軸微調整リング”と言う治具を購入しました。これは海外調達と言うことですが星見屋さんが取り扱っている様で、役1ヶ月かけて入手できました。これがないと精密な光軸調整ができないので、購入のまま使う他ありません。
私も入手まで待ち、それから光軸調整を始めることができました。

(後に分かったことですが、このスケアリング調整機構は必須ではありません。無い場合には3.1項を飛ばして調整すると良いでしょう)

1. 光軸とは(何を調整するのか)

図-1 GS-200RC構造図と調整個所

上に図~1として構造図と調整個所を示します。以下の説明はこの絵を基準に説明します。

1.1 副鏡の位置

一見この機種では調整個所が無いように見えますが、副鏡を止めている鏡筒先端部を取り外すとスパイダーを止めている、四つのさらネジが見えます。これで、副鏡の中心を設定することができます。

1.2 副鏡の向き

副鏡の向きは他の反射式望遠鏡同様に副鏡の3本の押しネジで調整します。

1.3 主鏡の向き

鏡筒の背面にある3ヶ所の押しネジと引ネジにより主鏡が副鏡の中心を向く様に調整します。

1.4(0) 接眼部の向き

この機種では、接眼部と主鏡は固定されており、接眼部と主鏡の向きの軸が異なっている可能性があり、これを微調整する必要があります。この為には上記に述べた”M90RC接眼部用光軸微調整リング”を90mm延長チューブに取り付け調整します。

2. 調整の為の事前準備

2.1 準備するもの

1. レーザーコリメータ

 市販のもので、Amazonなどで購入。2インチ接眼部に差し込むためのアダプターも必要。

 

2. 50mm一眼レフ用レンズ
 私の場合、撮影用にNikonZ5を使用しているので、Zマウント用の中華レンズTTArtisan(約1.5万円)をAmazonで購入した。

 このレンズはAPS-C用、マニュアル絞り、マニュアルフォーカスでこの目的に最適である。BKP200の光軸調整では焦点距離35mmのもの

 を使用したが、今回は最短撮影距離は長くともよく、大きく撮影する為に焦点距離50mmのものを使用した。もちろん35mmのものでも良

 い。

 今回は撮影部を遠くする必要があるので、エクステンションチューブを繋いで52mm->48mmダウンコンバーターを介してつないでいる。

 専用のコリメーター(2.5万円)も販売されている様であるが、カメラの背面液晶で実像で見ることができ、拡大表示も可能なので、高価な

 コリメーターよりずっと使い易い。

3. 実際の調整手順

3.1 接眼部の向き

まず、主鏡の軸と接眼部の軸を一致させる為、接眼部の向き調整を行います。方法は他のWebにも紹介されていますが、主鏡部のみを取り外すとなっていますが、主鏡単体で固定させることができず、調整は極めて困難です。私は鏡筒を三脚に固定し、鏡筒から副鏡固定部と主鏡から副鏡にのびている筒を取り外して行う事としました。

まず下の写真左に示す様に”M90RC接眼部用光軸微調整リング”を取り付けます。主鏡とあまり近すぎると後で主鏡の調整ができないので、離して取り付けます。

次についたてにアルミホイルの裏側(光沢の無い方)を表にして貼り、接眼部にレーザーコリメーターを取り付けます。主鏡からの反射はついたてと主鏡の距離により点になりますが、写真のように少し離してドーナツ状になる位置に設定した方が調整がやり易かったです。と言うのも私のレーザーコリメーターは芯が合っておらず回転させるとドーナツ状に点が移動するためで、レーザー光が主鏡反射のドーナツの内側の円を移動する様にこの微調整リングを調整しました。調整は3組の押しネジと引ネジのペアで調整できますが、一度調整したら以後ここには触れないようにします。

3.2 副鏡の位置調整

上記調整が終わったら主鏡から副鏡にのびている筒を取り付けますが、副鏡の部分は取り付け前に位置調整を行います。

副鏡の引ネジの中心が枠の中心に来るように4ヶ所の皿ネジで調整します。ノギスや透明プラ板をくり抜いた物でも良いが、私の場合BKP200の光軸調整の時に3Dプリンターで作った治具で調整しました。購入時の調整とはかなりズレていた様です。
この調整部分は鏡筒に取り付けてしまうと皿ネジが隠れて、後の調整ができないので、結構気を使って調整しました。

 

3.3 副鏡と主鏡の向き調整

3.3.1 カメラコリメーターの取り付け

調整の済んだ副鏡部を取り付け、上記レンズのついたカメラを接眼部に取り付け、明るい方向に向け撮影して見ます。BKP200の時に述べた、CCD位置ズレがこの絵でも観測されますが、今回は位置については無視できますので、特に校正点を気にする必要はありません。

 

この絵では小さいので拡大図を使って以下の調整の説明をします。

 

3.3.2 調整の実際

上の写真は調整後の画像を拡大表示した物です。(余計なものも写っていますが、これはPCのデイスプレーに向けている為で無視してください)この絵は専用の細長いコリメーターで見えるものと同一です。これについては、Webに資料がアップされているので、詳細を知りたい場合は検索すれば良いでしょう。
まず1の白いリングの部分を同じ厚さで中心からの同心円を描く様に主鏡の向きを調整します。2の部分の中心は副鏡に写ったカメラレンズの中心と、黒いリングは副鏡のセンターマークで、これが同心円で一致するように副鏡の押しネジで調整します。この調整は片方を調整すると片方がズレるので、何回か繰り返すと両方合うようになります。

3の部分は良くみると白いリングにスパイダーの影が見えます。専用コリメーターの説明によれば副鏡の位置調整とありますが、スパイダー枠の調整は済んでおり、何より、副鏡の調整によって位置が変化する要因が大きいので、このスパイダーの線が外側に表示されているスパイダーの影と一直線になるように副鏡と主鏡の向きを調整します。2の調整は無視して、1の白いリング位置3のスパイダーの位置に注目して、主鏡の向きと副鏡の向きを調整します。調整後に2のセンターマークが狂うことはありません。

調整は非常に微妙ですが、妥協することなく完璧に行い、この作業を完了させます。

3.3.3 点光源による確認(TriBahtinovMaskによる)

ここまで、調整できれば実際の星空の確認は不要であろと思ったが念の為地上の点光源でTriBahtinovMaskによる確認を行って見た。

TriBahtinovMaskににについてはhttps://satakagi.github.io/tribahtinovWebApps/Tri-Bahtinov.htmlに作成する為の情報がありますが、私はこれを3Dプリンターで作成しました。紙にプリントして切り抜いても良でしょう。

地上の街灯を探して撮影して見ました。通常はオフフォーカスで同心円を確認するが、この方法の方がより容易で確実に確認できると思います。3軸の方向に輝線が出ていますが、どの輝線も偏りなく表示出来ていれば良く、満足な結果といえます。

3.3.4 フラット(RAW飽和)画面の確認

調整が終了したので確認の為フラット画面を見てみます。(下の絵は正式なフラット画面ではありませんが、フラットパネルを飽和ギミで撮影し現像パラメーターを暗くなる様に設定すると明るさの分布をリアルタイムで表示することができます)

BKP200で使用しているカメラと同じものなので、CCD中心位置の狂いは同様で円がその分下にズレています。BKP200の時の様な斜鏡のオフセットにより発生する中心部のイビツはなく、綺麗な同心円を描いています。

4. 結論

リッチクレテイアンの調整は難しいと言われており、ホログラフアタッチメントが必要など色々の噂がありましたが、やって見れば意外と簡単で精密に調整できたと感じています。ここまで調整できれば、実際の星を観測して調整する必要は全くないと感じています。

もう一つ、スケアリング調整治具”M90RC接眼部用光軸微調整リング”は必ずしも必要ではないと感じています。これはズレていたとしてもカメラのCCD位置の狂いと同じと見なすことができ、依然光軸調整は可能だと言うことです。スケアリング調整治具は逆にカメラのCCD位置を補正するのにも使えるのではないかとも思っています。

5. 実写

5.1 調整前と調整後

M3星団の撮影結果を下に置きます。

M3星団 光軸調整前 (2022/12/19)

M3星団 光軸調整後 (2023/02/21)

写真をクリックすると横2000ピクセルで表示されるので、比較出来ます。調整後の方がはるかに精細な絵となっています。

5.2 望遠鏡の違いによる撮影画像

私が天体撮影にはまった原因となったM27アレイ状星雲の撮影を違った望遠鏡での撮影画像で見てみます。

M27 by GS-150-CC F12

M27 by GS-200-RC F8

M27 by BKP200 F4

それぞれの絵で色調が異なっていますが、レタッチの違いによるもので、同じ色調にすることは可能であると理解下さい。またBKP200は焦点距離が短いのでトリミングしてほぼ同じ大きさになるように調整しています。いずれも最終的に解像度よこ2000ピクセルに合わせています。やはりF12では少ない周りの星がF8のこの機種では多くの星が写ります。さらにBKP200のF4ではさらに小さな微光星まで写りこんでいます。どれだけ多くの星をとらえることが出来るかはISO値や露出時間ではなく、望遠鏡の明るさF値によるものだと言うことがわかります。現在はGS-200-RCとBKP200の2台体制ですが、目的に応じて使い分けて行きたいと思っています。

6. 次は?

光軸調整が完了したことで、次のステップに進むことができる。

コマコレクターの検討

TriBahtinoMaskの作成
フードの作成
フラット補正画面の作り方

などである。

 

ページの作成が完了したらここにリンクを貼ることにしたい。(2023年3月5日)

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